家庭でお子さんが誕生すると将来への準備がはじまります。育児世帯にとって教育資金は一大支出となり計画的な準備が必要です。その中で「学資保険」を選択される方が多いですが、今回はその保険について見ていきたいと思います!
子どもがいる家庭にとって養育費以外で大きなものは教育費です。公立の小中学校に通わせても諸経費は必要ですし、一番大きいのは大学や専門学校での学費でしょう。大学では私立文系に通うと1年で100万円ほどの授業料などが必要です。また専門学校でも2年間で400万円ほど必要なところもあるでしょう。
親としては将来、子どもの進路に選択肢を増やしてあげたいと教育費を生後間もない時から意識するのは当然かもしれません。
今回は「学資保険」と言えば、高い返戻率で有名な「ソニー生命の学資保険」の内容を見ながら教育資金の準備は学資保険で妥当かということを見ていきます。
返戻率105.5%になるように保険プランをたてました
受取学資金総額 200万円 契約者(30歳) 被保険者(0歳)
ケース:1,子どもが0歳から10歳までの期間に毎月保険料を払い込む(年間189,456円)
2,子どもが18歳~22歳になる各年で40万円を受け取る(総額200万円)
ソニー生命の学資保険はおそらく日本で一番契約数が多く約150万件以上です。選ばれる理由の一つに他社の学資保険に比べ返戻率が高いことです。
今回のケースでは、払込保険料総額が1,894,560円で受取学資金総額が200万円ですので、
返戻率 105.565% = 2,000,000÷1,894,560×100
この返戻率は他社と比べ高く、月払いを年払いにすると106%に上げることもできます。銀行で積立をするより学資保険で積み立てた方が利率が高いので選ぶ人もいそうです。
では今回の学資保険をさまざまな点から見ていきたいと思います。
学資保険の保障はあまり大きくない
生命保険の一種であるので、学資保険でも契約者(親)に万一のことがあれば保険金が支払われます。学資保険の場合は、契約者に万一のことが起これば保険料の払い込みが免除され受取学資金の総額受け取ることができます。
これを言い換えると受取学資金総額=保険金となります。ソニー生命で学資金の設定を200万円に設定する人が多いですが、親が亡くなって200万円の支払いでこれからの生活が無事に送れるでしょうか?そのような家庭は少ないと思います。
学資保険の生命保険としての機能はとても小さいのです。
22年間で利益が105,440円をどう見るか?
返戻率105%~106%は学資保険の中で高い数字です。しかし、これは保険料を10年間払い続け、契約から22年後に無事満期を迎えられた場合の話です。
保険であるからには途中で解約となると元本割れする可能性が非常に高いです。返戻率を高くするためには22年間待たないといけません。その間に起きたトラブルは学資保険以外の資金でまかない乗り切るしかありません。
そして22年でえられた利益は105,440円という額を大きいと見るか、小さいと見るかがあります。22年間資金を自由に動かすことができません。今回の利益を22年で割ってみると、
105,440÷22=4,792.7円ほどになります。年間5,000円ほどの利益をえるために22年間資金の自由がなくなる。これを良しとするか、悪しとするのかは価値観によって大きく分かれると思います。
投資家目線で今回の学資保険を見る場合
解約リスクによる元本割れの大きさ>満期で得られる利益
リスクの大きさに対して、得られるであろう利益・メリットが小さいと思います。
22年間という長い期間に資産運用で約10万円の利益を取るにはかなり低いリスクをとるだけでいいからです。
※学資保険でも生命保険料控除の一般生命保険料控除を使えますが、学資保険だけを生命保険として利用している人は少ないと思うので試算に税金の還付は入れていません。
学資保険を使った方がいい人・向いている人
ではそのような中で学資保険を利用したらいいと思う人はどんな方でしょう?
- あまり金融商品に詳しくない人
- 節約が苦手で口座引き落としの方がお金を貯められる人
- お金の管理は自分でするより誰かに任せたい人
おそらく金融商品や保険に詳しい人は学資保険を契約する人は少ないと思います。逆を言えば、お金を少しでも増やしたいけどあまり金融について詳しくない人は検討の余地があると思います。
保険であるからには途中で解約せずに満期まで持つ!を知っているだけでいいからです。途中で解約すると元本割れすることがあるから、絶対に解約しない・払い込みを続けようと頑張っている人もいるはずです。保険は自由度がない分、浪費せずに家計をつくっているという側面もあるでしょう。
保険の保障と利益率の両方を求める場合は?
学資保険は保障が小さく、それだけで契約者の死亡などに備えることはできません。では、どうすれば保障も持ちつつお金を効率的に働かせることができるのでしょうか。
死亡や就業不能への備えは、定期保険・就業不能保険などで行う
利益を求めるなら資産運用で効率的に低リスクで運用
死亡やケガ・病気などで働くことができないというリスクは定期保険や就業不能保険で備えるといいと思います。
ネットライフ生命の「定期死亡保険ーかぞくへの保険」で被保険者30歳から10年間の保険期間で保険金3000万円の内容では、月約2,700円の保険料です。最近はネット系生命保険が人気で分かりやすく、保険料も安く死亡保険などはおすすめです。
2,700円の保険料で3000万円という大きな保障を得ることができます。基本的に保険は掛け捨ての方が資金効率の面から言ってもお得だと思います。
SBI生命の「就業不能保険ー働く人のたより」は被保険者30歳で保険期間60歳までで保険料は1,440円です。万が一働けない状態が60日以上続いた場合、月当たり10万円の保険金が状態が治るまでもらえます。
なお60日以内は健康保険などの公的保障があるため、その後の経済的な困難への備えとしているためです。
資産運用は低リスクなものを使う=債券をあつかう投資信託
株式をあつかう投資信託を月々10,000円で積み立てる
教育資金は必ず使うものであるために極力元本割れは避けたいのであまりリスクはとれません。しかし、長い期間があるので低リスクで200万円を貯めることができます。
月10,000円を投資信託(株式への投資)で積み立てていくと、利率1%とかなり低く見積もっても15年半ほどで200万円に到達します。200万円に到達してからはすべて現金で貯金するだけでより多くの教育資金を用意することができます。投資信託の中で利率1%はかなり低い想定で、長期で分散させることでリスクも下げながらリターンもより多く得ることができると思います。
学資保険は選択肢の一つではあるがベストではない
個人の考え方や性格によって選ぶべき選択肢はちがうと思いますが、教育資金のためにベストが学資保険とは限りません。長い期間を用意する時間にあてられるのでそのぶん多くの選択肢があります。知らないと知っているでは後々、大きな結果としてあらわれてくるかも知れませんね。
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